☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会 第5回-②

BONBONCANDYにじいろじかんでは、長期の付き添い入院を経験した家族を対象にweb座談会を開催しています。このブログでは、2021年12月にLINEで行った「☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会 第5回」の模様を3回に分けてお届けしています。2回目となる今回のメインテーマは、「日常生活に戻る為に工夫したこと」「退院後の通院検査で気になったことや工夫したこと」についてです。

第5回の①の様子はこちらから

目次

今回の参加者

・石井 薫(かおる)さん

子供が2歳半のとき左腎明細胞肉腫になり、抗がん剤治療 ・摘出手術・放射線治療を経験
大阪市立総合医療センターに8カ月入院

・Mさん

Mさん

子供が2歳のときにIGA血管炎になり、それが原因で紫斑病性腎炎を発病。
5カ月間の入院後、免疫抑制剤(ネオーラル)とステロイドの在宅服薬治療を経験し、現在は経過観察中。
子供の入院中に、自身の妊娠・出産も経験。
まきさんとは、同じ病院に入院していたことをきっかけに出会った。

・麻紀(まき)さん

子供が4歳のとき急性リンパ性白血病になり、大阪市内の病院に5カ月入院。
退院後も在宅服薬治療(抗がん剤2種類、ステロイド治療)と通院抗がん剤点滴治療(月に1回抗がん剤治療室にて)を経験

新たな試み:LINEで座談会を開催してみました!

第5回目となる今回の☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会では、新たな試みを取り入れています。これまで、参加者の都合が合う日時にzoomで開催していましたが、今回は初めてLINE上で質問に答えてもらう形式で開催しました。このブログでは、質問ごとに参加者の回答をご紹介していきます!

質問:日常生活に戻る為に工夫したことはありますか?

かおるさんの場合

① TSURUMIこどもホスピス(※1)の最大限利用
(※1)TSURUMIこどもホスピス:生命を脅かす病気(LTC)の子どもの学び、遊び、憩い、やってみたいと思うことを叶え、その子の「生きる」を支えるための日本初のコミュニティ型子ども向けホスピス。

退院後は免疫力が心配な毎日でしたが、ホスピスでは消毒・換気などに関してとても気をつかってくれていて、バリアフリー対応もあり安心して過ごすことができました。
平日は息子と2人で行かせてもらい、ホスピスで知り合ったお友達と遊んだりして過ごしました。週末は家族で行き「また来ましたー。ただいまー♪』とHOMEのような感覚で利用させてもらいました。

② 人の目を少し避けていたときもあった
薬の副作用で髪の毛が無い時期がありましたが、本人はまだ3歳で気にしていない分、帽子を嫌がることがありました。見た目のインパクトが大きくて、周りの反応から私の心が疲れてしまうこともありました。みんなが驚くのはわかっていても、目の当たりにすると『ここでマイクを持って、この子が頑張ってきた演説でもしてやろうか!がんばった証じゃい!』という反発心が少しありました。みなさん悪気がある訳ではないのはわかっているんですが、そんな気持ちのときもありました。

③ 遊具のない公園で遊ぶ
遊具は菌の感染面でも少し怖かったのであえて遊具のない公園に行きました。森ノ宮にある難波宮跡公園(なにわのみやあと公園)は遊具がなくおすすめです。テントを張ってランチをしたりシャボン玉をしたり、凧を上げたりして平和に遊べました。

④ プチ旅行
旅行に行きたいけど免疫面・コロナもあり動きづらい時期に、大阪の舞洲にあるグランピング施設『パームガーデン舞洲』に2回ほど宿泊しに行きました。コテージのバスバージョンのようなところなんですが、そこは玄関先に食料を置いておいてくれたりして非対面で過ごすことができて快適でした。

パームガーデン舞洲でのひとこま

◎boncanコメント
退院して日常に戻れることはうれしい反面、衛生面や安全面、人の目など、病院の外だからこその課題に直面することもあります。コロナの流行も重なり、できることがさらに限られる中、少しでも子供が子供らしく過ごせるようかおるさんが努力されたことが伝わってきました。経験者がおすすめしてくれる公園情報は、とても有益な情報ですね!

Mさん

Mさんの場合

① 人の少ない公園で遊ぶ
公園は人のいないところでなら遊ぶ許可がでていたので、家の近くで人の少ない・もしくは人がいなくて手が洗える水道のある公園に午前中のうちに行ってました。水道がない公園にはペットボトルに水を入れてアルコール除菌シートを持って行っていました。入院で体力が落ちていたので極力歩いて行っていました。
保育園を休園している間は、復園してから保育生活がスムーズにおくれるように箸やハサミの練習をしたり、絵の具を使ったりして遊ぶようにしていました。

② ネットや宅配を利用
日常の買い物は生協に切り替え、自身の散髪も美容院には行かず家で散髪しました。自分も体調を崩さないよう、子供の治療の邪魔にならないよう極力、服や日用品などもネットを利用するよう心がけていました。

③ 親の精神的ケアのため行政を利用
治療中は行動制限などで、親子でストレスがたまり(特にインフル流行時期)、私自身、子供に強くあたり、叩いたり怒鳴ったり虐待に近いことをした日々がありました。治療が終われば自然と子供にあたることはなくなったのですが、2年間、気を張り続けていたので肩の力の抜き方が全くわからなくなりました。保育園に相談して、区役所の子育て相談窓口に連絡をいれてもらい、約1年間、毎月保健師さんと面談していくことで入院前の精神状態に戻れました。

◎boncanコメント
懸命に病気と闘う子供を前にすると、親はなかなか弱音を吐きづらいものです。しかし、親も人間です。心身ともに健康にいるためには、ケアを受ける必要があります。今回、Mさんが精神的に追い詰められていたことを打ち明けてくれ、行政に相談すればケアが受けられることを教えてくれたことは、同じ境遇にある人を大いに救ってくれたのではないでしょうか。Mさんの勇気ある告白に感謝するとともに、辛さを抱えている人は私たちboncanでも行政でもいいので、ぜひ弱音を吐ける場所を持ってほしいと思います。

まきさんの場合

① 消毒グッズの携帯
Mさんやかおるさんもお話されていましたが、外に出るときは必ず消毒や除菌シートを持ち歩いていました。娘は看護師さんの真似をして、伸びるキーホルダーのリング部分に消毒をはめて入院中から持ち歩いていました。「看護師さんになりたい!」という気持ちから消毒するのも看護師さんの真似がとっても上手で助かりました。今でも手作りの消毒液ホルダーを学校やお出かけの際に必ず持ち歩いています。

② ネットショッピングの利用
日常の買い物は、なるべくネットを使用したり人が少ない時間帯にスーパーに行ったりしていました。大きめのドラックストアなどにもよく行きました。 

③ ピークタイムをずらしたお出かけ
家の中だけでは親子共々、気持ちが塞ぎがちになるので、少し免疫のコントロールが上手くなってきた頃には温かい服装をして平日の夜にイルミネーションを探しにドライブに行ったりしました。遊園地に行きたいと言われたら、平日の朝に小さな遊園地がついている動物園に行き、開園すぐでまだ人がいない遊園地コーナーに行って乗り物に乗ったりもしていました。

平日は混んでなさそうな遊園地や子供の遊び場を探しては、早朝や夕方など行く時間を工夫しながら遊んでいました。公園には早朝6時頃にゴム手袋をはめて遊びに行ったこともありました。とにかく、一般的な方々の行動とは逆の行動をとるようにしていました。

動物園の遊園地コーナーでのひとこま

④ お風呂での工夫
お風呂もとても神経質になりました。一緒に湯船にはつからないようにしたりしていました。今思うと少し神経質になり過ぎていたかもしれませんが、その頃は「何か少しでも防げるならば!」という感じで必死でした。

⑤ 習い事に通う
娘が物心ついた頃には、たくさんの人と過ごすことに慣れており保育園が大好きな子になっていました。そんな娘にとって、退院後の母と2人きりの生活は、身体は安定してきていても心のどこかで友達を欲しているのが伝わっていました。
このままではこの子の笑顔が減ってしまうと思い、たまたま開園したてのアフタースクールをネットで見つけました。そこは保育園児でも通えて、習い事もできるところでした。保育園への通園はまだ許可されていませんでしたが、習い事ならOKだったので、そのアフタースクールに事情を話して相談をしてみました。
すると、こころよく入塾を受け入れて下さり、いろんなご配慮をしていただきました。週に1回2時間のそのスクールが、娘は何よりも楽しみで心の支えでした。
初めて塾にお迎えに行ったときの、嬉しそうな顔は今でも忘れられません。そのとき、「この子には、少しリスクはあってもお友達との時間が必要なんだ!」と確信が持てました。治療によっては、今日は休ませた方がいいかなという日も必ず「行ける!行きたい」と言い、お迎えに行くと元気で笑顔いっぱいになっていました。娘は今でも「楽しかったな」と思い出話をします。

アフタースクールでのひとこま

◎boncanコメント
子供は人との関わりの中で成長していくと言われています。病気の治療後は外界との接触を持つことに慎重になりますが、それでもできる範囲で人との関わりを持ち、子供が笑顔でいられる時間を作ったまきさんの努力からは、とても大きな愛情を感じます。踏み出すには勇気が必要ですし、すぐには受け入れ先が見つからないこともあるかもしれません。それでも、主治医や受け入れ先の施設と相談しながら、外界との接触を少しでも確保して、親子ともに笑顔でいられる時間が増えたらいいなと思います。

質問:退院後の通院検査で気になったことや工夫したことはありますか?

かおるさんの場合

① 待ち時間の過ごし方
退院したときもコロナ禍でしたので病院に通うときはベビーカーに乗せて、手がエレベーターや共有部分に触れないように神経質になっていました。待ち時間がとてつもなく長いのでiPadを持参したり本を読んだりして過ごしました。
この外来通院の待ち時間の長さに親子で慣れたので、今では小児科など1時間2時間待つのはなんの苦でも無くなりました。「何して遊ぼうかいね」といった感じでイライラすることなく心が広くなりました(笑)

② オンライン処方箋の利用
外来になるとお薬が院外処方になり、診察後に薬局で待つのはとても大変でしたが、オンライン処方はとても便利でした。EPARKというアプリを利用し、家の近くの薬局に写メを送り受け取りの時間を指定すると準備しておいてくれるというシステムです。
今まで待ち時間が1時間ほどあったのですが、それが帰宅し最寄りの薬局で受け取れるようになったので、体力面・待ち時間の感染リスクなど不安が一気に無くなりました。TSURUMIこどもホスピスで愚痴をこぼしていたらスタッフさんが紹介してくれました。

◎boncanコメント
闘病を経験した親子が避けて通れないのが、病院や薬局での長い待ち時間ではないでしょうか。特に小さな子供を抱えての通院は、暇つぶしグッズが欠かせません。かおるさんが紹介してくれたオンライン処方箋は、とても画期的ですね。「困った・不便だ」と感じることは、やはり声に出してみることが大事だと思わせてくれるエピソードでした。

Mさん

Mさんの場合

① 移動手段にタクシーを利用(不審な目を向けられることも)
退院後、電車やバスの交通機関を使って移動することは禁止されていました。また家から病院が近かったこともあり、タクシーで通院していました。コロナ前だったので、親子でマスクをして、窓を開けて乗車する私たちのことを不思議に感じたり、少し警戒している運転手さんもいらっしゃいました。また免疫抑制剤の副作用で多毛になっていたので、顔や腕などの毛深さがあり、公園でも不思議な目で見られていました。そんなことがあったので、タクシーの運転手さんや、そのとき遊んでる見ず知らずの親子には治療中であったり、副作用であることを伝えてました。

② 待ち時間の過ごし方
通院の診察の待ち時間は長いときで2時間だったので、小児科に置いてある絵本やスマホで動画を見せてました。確実に2時間かかるだろうと思ったときは看護婦さんに混み具合を確認し、公園に連れていったりもしました。私は時間が気になるので時計はあまり見ず、公園で日向ぼっこをしてる感覚でボーっと何も考えずに過ごしてました。

③ 病院での待機場所について
気になったことは、午前診療は午後診療と違い体調不良の子供と定期検診で通院してる子供の待つ席が一緒だったことです。うちは下の子を連れての通院だったので、本来受診すべき時間帯での受診が難しく、午前診療をやむを得ずしていました。看護婦さんも感染対策として、小児科から離れた席を教えてはくれましたが、別室での待機場所があれば少しは安心して通院できたのではと思います。

④ FAXでの処方箋の利用
お薬の処方は病院から処方薬局にFAXしてもらいました。お薬は量が多く作るのに1時間半かかると言われたので、主治医に1日多く処方してもらい翌日受け取りに行くようにしてました。1日の待ち時間の長さや採血で子供の体力がもたなかったからです。

◎boncanコメント
やはり病院での長い待ち時間は、患者家族にとって大きな課題だと感じます。いつ呼ばれるかわからない長い時間を過ごすのは、とても疲れることです。小さな子供が一緒ならなおさら、院内に安心して過ごせるスペースが必要ですよね。その声を吸い上げて改善していけるよう、boncanもできることから取り組んでみようと思います。

まきさんの場合

① 通院に車を利用
主に、病院には車で通院していました。天候の良い季節には自転車で30分ほどかけて行ったこともありますが、とても長い病院での待ち時間を終えて帰る頃には自転車で30分かけて帰る元気は無かったので本当に数回だけ通いました。先生からの配慮で一般の外来の方が少ない時間帯に診察していただくことが多く安心できました。

② おもちゃを準備
病院が大好きだった娘は、たくさんのお気に入りのおもちゃやタブレットを前日の晩から準備していました。病院でお友達に会えるときはいつもとってもウキウキした気持ちでリカちゃんと人形のお洋服や塗り絵や、トランプをカバンに詰めていました。

外来で診察を待つまきさんの娘さん

③ 待ち時間の過ごし方
お友達がいると天気がよければ一緒に公園に行ったり、いないときも散歩がてら採血後の診察までの時間には一度、外出したりことが多かったです。公園の人気の少ないところにレジャーシートを敷いてピクニック気分でお弁当やオヤツを食べるときもありました。
抗がん剤の点滴治療があるときは大人の患者さんの中に入るので、タブレットを見せていました。30分弱のことですが他の方の体調面なども気になり、静かに過ごせるようにと努めていました。点滴が終わると看護師さんが毎回、娘の好きそうなキャラクターのシールを準備して下さいました。娘は点滴治療中に、もらうシールを嬉しそうに選んでいて素敵な時間を過ごすことができていました。

◎boncanコメント
病院が大好きだったというまきさんの娘さん。長い待ち時間も、とても楽しい時間に感じられますね。子供との通院では、まきさんのように周囲の患者さんに気をつかうという親御さんも多いのではないでしょうか。子供はとてもがんばってくれていますし、そばで見守る親御さんも本当にがんばっています。便利な道具や頼れる人にはとことん頼って、少しでも負担を減らせることを願っています!そして通院が終わったときには、がんばった自分たちをしっかり甘やかしてくださいね。

※退院後の回復の過程には個人差があります。今回のブログは闘病を経験した子供たちがたどった回復への道のりの一例として、参考にしていただけると幸いです。

次回予告

☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会 第5回-③では、復園などで工夫したことについてご紹介する予定です!

☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会への参加者も募集中です!BONBONCANDYにじいろじかんでは、長期の付き添い入院を経験した家族を対象にweb座談会を全6回開催予定で、参加してくださる方を募集中です!ご自身の経験を共有することで、救われる誰かがいるかもしれません。開催日は柔軟に対応できますので、ぜひお気軽にお問合せください!

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『付き添い家族の知恵袋 web座談会』の活動は

・日本コープ生活協同組合連合会様の「地域ささえあい助成」

・公益財団法人コープともしびボランティア振興財団様幹事に兵庫県の企業12社様よりこご支援いただく「やさしさにありがとうひょうごプロジェクト」にて実現に向けての資金のご提供をいただきました。

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