☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会 第3回-①

BONBONCANDYにじいろじかんでは、長期の付き添い入院を経験した家族を対象にweb座談会を開催しています。このブログでは、2021年10月20日に行われた「☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会 第3回」の模様を3回に分けてお届けしています。1回目となる今回のメインテーマは、カテーテルを保護するために使う「CVケース」についてです。

第2回目の座談会の様子はこちらから
第2回-①
第2回-②
第2回-③

目次

今回の参加者

・石井 薫(かおる)さん

子供が2歳半のとき左腎明細胞肉腫になり、抗がん剤治療 ・摘出手術・放射線治療を経験
大阪市立総合医療センターに8カ月入院

・赤坂 絵里(えり)さん

子供が4歳のとき横紋筋肉腫(腹部)になり、陽子線と化学療法を経験
主な入院先と期間:
CTの撮れるこども病院 1日
関西医科大学 1カ月弱
大阪市立総合医療センター 約2カ月
兵庫県立こども病院(隣接する神戸陽子線センター) 約2カ月
大阪市立総合医療センター 約6カ月
現在は、自作のCVケースをインターネットで販売している。
えりさんのショップ「VOVO’S GALLERY

・麻紀(まき)さん

子供が4歳のとき急性リンパ性白血病になり、大阪市内の病院に5カ月入院。
退院後も在宅服薬治療(抗がん剤2種類、ステロイド治療)と通院抗がん剤点滴治療(月に1回抗がん剤治療室にて)を経験

今回のおやつ

リモートで行われるこの座談会では、孤独な食事が多かった付き添いの食事を経験したからこそ『みんなと一緒』を味わい楽しみながらリラックスしてお話しを!という思いで、毎回事務局がお茶菓子を手配します。

今回のおやつはこちら!

モンドセレクション5年連続金賞にも輝いた「長崎カステラぷりん」です。カステラ風味のプリンに、ジャリっとした食感のソースをかけていただきます♪

入院してすぐに裁縫?CVケースについて

胸に取り付けたカテーテルと、CVケース

子供の入院治療では、薬剤の投与や検査をスムーズに行うためにカテーテル(医療用の細い管)を体内に埋め込むことがあります。カテーテルの先端は体から突出しているため、保護するために「CVケース」を付けます。入院中、とても大切な役割を果たすCVケースですが、市販品を見つけることは難しく、入院直後で余裕のない付き添い家族にとっての大きな課題となっています。今回は、入院後どのようにしてCVケースのことを知り、用意したのかについて話しました。

まきさん

病院によって話されるタイミングも違うと思いますが、CVケースのことを、いつ、どこで知りましたか?

えりさん

うちの子は、最初に病院を受診したその日にカテーテルを入れる手術をしました。手術後は病院のCVケースを付けて帰ってきたんですが、その日のうちに看護師さんから「お母さん、このケースを3~4個作ってください」と言われました。

私は本職で看護師さんが付けているナースポーチや、酸素ボンベを移動させるときのケース、吸引器バッグなどを作っていました。なのでスキル的には作れなくはないのですが、作る時間も場所もミシンもなく、とても戸惑いました。とりあえず100均に材料を買いに行って、子供が寝たあとに手縫いで作りました。

かおるさん

そのときは、誰か作ってくれる人はいなかったんですか?

えりさん

職業柄、手芸が上手な人や作れる人は周囲にたくさんいるけど、会社の人や友達に個人的にお願いするのは抵抗がありました。本職だけに、ちゃんと物を見てサイズとかを把握しないと、パッとは作れないんですよね。

かおるさん

CVケースを自作するのって、無理だと思いませんでした?

えりさん

普段から仕事でいろんなものを作っているけど、このケースは作れないと思いました。最初の1個はベッドサイドで手縫いして作りましたが、2~3週間してからは旦那さんに付き添いを代わってもらって、家で作っていました。2~3個作るとなると、1時間ぐらいはかかるから、移動時間も含めて3時間ぐらいは必要でした。

そして、うちは治療の都合で何度か転院したのですが、病院が変わるとCVケースの形も違うんです。看護師さんによっても、使い勝手が違います。転院後は家に帰れていたので、時間を見つけて作っていました。

まきさん

1個目と2個目のCVケースを見せてもらえますか?

えりさん作、1個目のタイプ
えりさん作、2個目のタイプ
えりさん

2個目はCVを横にして入れられて、出てきた点滴を外側に引っ掛けられるようになっています。寝ている間にうつぶせになっても使えるタイプなので、カテーテルの閉鎖(※1)も起こりにくかったです。1個目は縦から通すタイプで、これも便利でした。外に管を巻いてキュッと絞れて、どこかにひっかけることもできます。

(※1) カテーテルの閉鎖:カテーテルや点滴をしているときに、管が詰まること。ルート閉鎖とも言う。閉鎖することで、体内に入れるはずの薬剤が適切に入らないなどの危険がある。点滴の際は「輸液ポンプ」という機械で閉鎖していないか管理し、閉鎖を起こすとアラームが鳴る。

まきさん

カテーテルの閉鎖って、大変でしたよね。このCVケースの形だと閉鎖しそうだなって思っても、それを付けるしかないこともありました。自作のCVケースが原因で閉鎖していることもきっとありましたよね。
CVケースを作るときは、見本を見て作りましたか?

えりさん

はい、病院の見本を真似して作りました。

CVケース販売が付き添い家族の心を救う

かおるさん

うちは病院から、CVケースの作り方の本を突然渡されて「カテーテルが入ったのでCVケースを作ってください」って言われました。無理!!と戸惑うと同時に、みんなどうしてるんだろう?と疑問に思いました。

その日のうちにパパに作り方の本と見本を持って帰ってもらって、おばあちゃんに1つだけ作ってもらいました。それだけでとてもありがたかったんですが、1つじゃ足りないんですよね。でも、おばあちゃんにはこれ以上は頼めないし…夜な夜なネットで探しました。

どこかにCVケースを作っている人いないかな?と思いながらも、最初はどう検索すればいいかもわからない状態で。「手術 胸」とか、いろんなキーワードで検索して、たどり着いたのが、えりさんが作られているCVケースだったんです。

えりさん

子供の入院で精神的なダメージが大きいときに、物を作る余裕はないですよね。本職の私でも困ったので、困っているパパママは多いだろうなと思い、CVケースを作って販売していました。
※えりさんのショップ「VOVO’S GALLERY

かおるさん

本当にすごいですよね!ありがたいです!

えりさん

病院によってCVケースの扱いも違うし、ボランティアさんが入っている病院もあります。きっと、手術着とかはボランティアさんが作っているんだと思います。そんな状況もあり、最初は「これ、売っていいのかな?」と悩みました。でも、作れなくて困っている人の方が多いだろうと思い、細々とでも続けていかないといけないという使命感を持ってやっています。

かおるさん

えりさんのおかげで、たくさんの人が救われていると思います。
入院したママたちはみんなCVケースを売っているところを探していて、私のようにえりさんの会社にたどり着いて購入している人もいました。

えりさん

北海道から九州まで、本当にたくさんの人が買われていますが、「購入されました」とメールが来るたびに、最初は複雑な気持ちになっていましたね。自分が作ったものが売れて役に立てるのはうれしいけど、病気の子供がいると思うと最初の1年ぐらいは苦しかったです。今では、購入される人の気持ちがわかるので、だいぶ楽になりました。

かおるさん

子供のために必死でCVケースを探していたときにえりさんに出会って、初めて子供の病気のことを話せたんです。それまでは誰にも言えませんでした。CVケースの購入を通して、気持ちまでも受け入れてくれて、心のケアまでしてもらえました。今でも、感謝の気持ちでいっぱいです。

えりさん

購入者さんとのやり取りは、旦那さんにも共有しています。いろんな思いを受け取って「こういうことを伝えたいけど、この言葉でいいかな?」と相談しながら、購入者さんとお話しをしています。

かおるさん

旦那さんの存在も大きいですね。

まきさん

今回の座談会の記事化もそうですけど、直接会えない人に、負担にならないような言葉を選んで思いを伝えるのは難しいですよね。

かおるさん

購入者さんとメールのやりとりをしていて、気持ちが落ち込むこともあるんじゃないですか?

えりさん

それを乗り越えて今があるから、やっていてよかったと思えています。今後も続けたいと思っていますよ。

全国の方にたくさん買ってもらっていますが、中にはCVケースの存在を知らない病院もあるみたいです。病院で「作って」と言われないから、CVケースの存在自体を知らない人もいます。付き添い入院中のお母さんから「やっぱり、こういうケースってありますよね?」と聞かれることもあります。

治療中は薬の副作用で肌も敏感になるし、管を体にテープで直接貼ってしまうと肌が荒れることもあります。それはストレスになるし、よくないですよね。メールをいただく方とは「こういう形がいいんじゃない?」と写真を見ながらお話して、その子に合うようにアレンジしています。

まきさん

うちは病院から作るように言われなかったんですが、私は以前、小児病棟の保育士をしていたので、CVケースの存在を知っていました。

保育士をしていた当時も、CVケースを付けている子供が徐々に増えてきていました。その当時はどこにも販売されていなかったから、ママたちも試行錯誤されていましたよ。みんなが工夫して改善を重ねて利便性がどんどん高まっていくんですが、その過程に愛がありますよね。

手作りのCVケースを何パターンも見ていたから、自分の子供が入院することになったときは、ママたちの愛情深い姿を思い出して作ることができました。
「急ぎのときはこう作っていた」とか、「ひもを首の後ろで結ぶと痛いから、胸の方で結ぶといい」とか、すぐに思い出せました。

そんな記憶を頼りながら、第一作目はゴムひもとガーゼのハンドタオルとホックで作りました。ボタンの位置を工夫したり、角が当たると痛いから丸くしたり。保育士としてかかわっていた付き添い入院のママたちの愛や思いに、パワーをもらいました。

えりさん

私の入院していた大阪市立総合医療センターでは、ずっと同じタイプのCVケースが使われているそうです。「この形が小さい子供にとってはベスト」という、付き添い入院の先輩たちのアイデアの結晶だと思います。

まきさん

えりさんが作られた1個目のタイプは初めて見ました。

えりさん

うちの子は陽子線の治療をしていたので、おなかにやけどができていて、CVケースが当たると痛いからずらせる形が便利でした。

陽子線の病院では、新しい靴下にひもを付けて、底が抜けない筒状のタイプでもOKでした。でも、そうなるとカテーテルが閉鎖しやすくなるんですよね。陽子線の病院は子供病院だったから、0歳の赤ちゃんから高校生まで、誰にでも対応できるような形だったのかなと思います。大阪市立総合医療センターに入院していたのは小学校までの子供だったから、乳幼児に使いやすい形になっていました。

ちょっとこぼれ話:治療に慣れる子供たち

かおるさん

最初入院したときは、「なんか、みんな付けてるな~」と思いながらCV ケースを眺めていました。入院に慣れている子は、カテーテルから薬を入れるとき、CV ケースから子供自身が自分で出し入れしていて、すごいな~と思っていました。

そうこうしていると、わが子も点滴をつなぐときに自分でCVケースを開け閉めするようになりました。ロック(※2)したときは管を全部入れる、点滴したときは管を巻く、という手順を全部覚えていましたね。入院中はそれを見て「すごいな」って感心していましたが、ふと思考が一般の人に戻ると、これってかわいそうな姿だよな…と思うこともありました。

(※2)ロック:点滴の管を体から一時的に外すこと。入院中はほとんどの期間、点滴につながれた状態で過ごすことになるが、お風呂のときや治療の内容によっては、ロックの状態で一時的に自由に過ごすことができる。

えりさん

元気だったら、そんなことを覚えなくてもいいのに…って思いますよね。

まきさん

採血にも慣れているから、うちの子は今でも採血で泣きません。

かおるさん

それは、先生や看護師さんへの信頼があるからこそできることですよね。

まきさん

最初は、「どこかで我慢しているのかな?」と思うこともありましたが、今では、採血をがんばれる自分に自己肯定感があるように感じています。その姿を見て、親としてもようやく認められるようになりました。

えりさん

うちは採血をがんばった日は、絵本を買って帰ってました!

まきさん

ついご褒美あげちゃいますよね!私自身は採血が苦手なので、採血で泣かない子供が毎回とてもかっこよく見えます!

えりさん

ずっとご褒美をあげていたんですが、子供の小学校入学を機になしにしました。「もうご褒美なしでもがんばれる!」って言っています。

かおるさん

子供のたくましさはすごいですよね!

次回予告

☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会 第3回-②では、入院中にあって便利だったものや、薬の飲ませ方についてご紹介する予定です!

☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会への参加者も募集中です!BONBONCANDYにじいろじかんでは、長期の付き添い入院を経験した家族を対象にweb座談会を全6回開催予定で、参加してくださる方を募集中です!ご自身の経験を共有することで、救われる誰かがいるかもしれません。開催日は柔軟に対応できますので、ぜひお気軽にお問合せください!

詳しくはこちら

『付き添い家族の知恵袋 web座談会』の活動は

・日本コープ生活協同組合連合会様の「地域ささえあい助成」

・公益財団法人コープともしびボランティア振興財団様幹事に兵庫県の企業12社様よりこご支援いただく「やさしさにありがとうひょうごプロジェクト」にて実現に向けての資金のご提供をいただきました。

次のお話はこちら(第3回-②)

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