2021年9月28日に開催された「☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会 第1回」の模様を3回に渡ってお届けしているこのブログ。この企画は、長期入院の付き添い経験がある方にご参加いただき、座談会を行うものです。3回目となる今回のメインテーマは、入院中の睡眠のこと、一番苦労したこと、闘病中の方に伝えたいことについてのお話です。
今回の参加者
・石井 薫(かおる)さん
子供が2歳半のとき左腎明細胞肉腫になり、抗がん剤治療 ・摘出手術・放射線治療を経験
大阪市立総合医療センターに8カ月入院
・赤坂 絵里(えり)さん
子供が4歳のとき横紋筋肉腫(腹部)になり、陽子線と化学療法を経験
主な入院先と期間:
CTの撮れるこども病院 1日
関西医科大学 1カ月弱
大阪市立総合医療センター 約2カ月
兵庫県立こども病院(隣接する神戸陽子線センター) 約2カ月
大阪市立総合医療センター 約6カ月
・麻紀(まき)さん
子供が4歳のとき急性リンパ性白血病になり、大阪市内の病院に5カ月入院。
退院後も在宅服薬治療(抗がん剤2種類、ステロイド治療)と通院抗がん剤点滴治療(月に1回抗がん剤治療室にて)を経験
付き添い入院の睡眠問題
付き添い入院では、親の睡眠がしっかりとれないという問題も大きいですよね。付き添いのベッドも病院によって違うし、リネン代をとられるところもあります。私の場合、最初はベッドを借りていたけど、結局子供のベッドで一緒に寝ることが多くて。ベッド代の負担も大きかったので、セミシングルぐらいの子供用ベッドで子供と一緒に寝ていました。子供はカテーテルが入っているから寝返りができないんですが、私も狭くて動けないので朝起きたら背中はガチガチになっていましたね。
私の病院は、1家族につき1台、付き添い用の折り畳みベッドを無料で用意してもらえていました。
子供が寝ているベッドが一番寝心地がいいんですよね。マットレスの質がいいんだと思います。私は基本的に子供と一緒に寝てましたが、背中がガチガチになってましたね。たまに簡易ベッドで寝ることもありました。
子どものベッドで寝た方が、睡眠の質としてはいいですよね!
転院後の病院は新しい病院だったので、間取りがちょっと変わっていました。大部屋だったんですがベッドが斜めに置かれていたので隣の人との距離が確保されていてよかったです。ソファベッドもありましたよ。
うちの子は、オムツ(※1)を絶対に履きたくなくて寝ているときも2時間おきに起きるのでその都度トイレに行かせていました。治療によっては1時間おきに尿を排出させないといけないので…その期間はほぼ寝られなかったですね。髄注(※2)の後で体を水平に保たなければいけないのに、トイレに行きたいと言い出して困りました。先生たちが4人がかりで寝たままの状態の子供を運び出してトイレに連れて行ってくれたりして、大変でした。そんな状況だったので、睡眠は二の次でしたね。入院中は、短時間でぐっと深く寝られる技術が必要だなと強く感じました。
(※1)オムツ:治療で使用する抗がん剤の種類によって排尿に時間制限がある。また薬の副作用や点滴の影響で排尿の量や頻度が増えるため、オムツを使用するケースが多い。
(※2)髄注:脊髄の間から抗がん剤を入れる治療。この治療の際に、病院によっては全身麻酔を使うところもあれば鎮静(睡眠薬のような薬)だけでするところもある。
そうですね。「よく寝たな~」と思って時計を見ても、1時間しか寝ていなかった!なんてこともありましたね。
私は、長期入院後の短期入院では耳栓が役に立ちました!さっき言ったような2時間おきのトイレがなかったから。治療のスケジュールに合わせて「この週は寝る!」と、あらかじめ決めるんです。寝ないと頭も働かないですよね。
体調崩したことはなかったですか?
私はありませんでしたね。
私は、入院していない方の子供からインフルエンザをもらったことがありました。感染予防のため病院からは「すぐに家へ帰ってください!」と言われ、そこから1週間は病院に行けませんでした。旦那さんはインフルエンザにかからなかったけど、ずっと微熱があって付き添いができないので、着替えを届けるだけになってしまい…入院中は、感染症に本当に気を付けないといけないですね。
私は体調を崩したことがなかったと思います。ずっと気を張ってましたね…退院後も気を張り続けていました。感染症の点で言えば、今はコロナの流行もあってみんな手洗いやマスクを当たり前にしていて、集団生活をしていても風邪をもらうことが減ったと感じます。これはありがたいですよね。
コロナ流行以前は、退院後の集団生活で「マスクしている子」として目立ってしまって、マスクをはずすかどうかの葛藤を抱えていました。今はみんながマスクをしているのが当たり前で、あの頃から考えるとすごい展開ですよね。
兄弟の心のケア、万が一のこと…入院中、一番苦労したことは?
入院中に、一番苦労したことや困ったことは何でしたか?
入院していない上の子の心のメンテナンスですね。とても気をつかいました。週7日間のうち、4日は私、3日は旦那さんが病院に付き添う毎日。睡眠不足で帰宅しても、上の子の相手をしなければならず、体力との勝負でした。家族みんなの心を潤すのは難しかったです。上の子のことはずっと心配でしたが、入院が終わるまで元気でいてくれたのでホッとしています。
私は、下の子を保育園に預けて病院に行き来してたんですが、保育園の先生には本当に救われましたね。当時まだ2、3歳だった下の子は、上の子の入院期間中におしっこができなくなった時期があったんです。トイレでできないだけじゃなく、おもらしもできなくなってしまって、夕方にはお腹が痛くなってしまって…。多分、ストレスが原因だったと思います。オムツでならできるようになったので、保育園の先生はおまるを用意してくれて、下の子とじっくり時間をかけて向き合い、信頼関係を作ってくれました。いろんな保育士さんがいる中で、子供の悩みをわかってくれる保育士さんに出会えて、本当にありがたかったです。
一方で上の子は、陽子線の治療中は毎日全身麻酔をしていました。食事と水も制限されるので食事をとれない日々が続き、麻酔から起きても食べられないことが多く、つらかったです。
入院の途中で吐血と下血があって、抗がん剤治療ができなくなったことがありました。その時期だけ個室に入ったんですが、今思うとそのときが一番しんどかった。あのしんどさを思うと、普段の付き添いはそこまで大変じゃなかったかもと思えるぐらいしんどかったです。
その時期、周りでは亡くなったお子さんもいました。私は看護師さんに「万が一、最期のときは、どうなりますか?」と聞いたんです。そしたら、「慣れている病棟を選ぶこともできるし、緩和ケア病棟にも行けます。家に帰る人もいますよ」と、ちゃんと教えてくれました。
そこに向き合うのはとても怖かったけど、聞いたときにちゃんと考えてくれていることがわかってなんだかホッとしました。そういうことに向き合えたのも、貴重な経験だと今では思います。子供の病気でこんなにつらい思いをしている人がいることも知らなかったので。
今、入院中の人に伝えたいこと「笑顔の時間が必要」
入院中の子供たちには、遊ぶことをあきらめてほしくないと伝えたいです。
入院は楽しいことじゃないけど、楽しんでほしいですね。今振り返ってみると、悪いことばかりじゃなかったと思えます。
TSURUMIこどもホスピス(※3)みたいな楽しい場所が、必要としている人に届いてほしいです。あと、コロナの影響で私は会えなかったけど、シブレッドとか!(※4)
(※3)TSURUMIこどもホスピス:生命を脅かす病気(LTC)の子どもの学び、遊び、憩い、やってみたいと思うことを叶え、その子の「生きる」を支えるための日本初のコミュニティ型子ども向けホスピス。
(※4)シブレッド・しぶたね:しぶたねは、病気の子供の兄弟を支える活動をしているNPO法人。シブレッドは、しぶたねの活動の一環であるヒーローキャラクター「たねまき戦隊シブレンジャー」の一員。
しぶたね(※4)さんは、下の子の支えになってくれました。シブレンジャーが来てくれて、廊下で待っている子供たちと遊んでくれるんです。その影響で、下の子は今でもレンジャーものが大好きです!でも、こんな風に入院中の子供の兄弟をケアしてくれる病院は少ないですよね。兄弟が病棟に入れない病院もありますし。
そうですね。病院に行くと、病室に入れない子供たちがエレベーターの前にいっぱいいて、子供同士で遊んでいました。待たなければならない子供も、待たせなければならないパパやママも、どっちもつらいですよね。兄弟と一緒にいてくれる人が誰かいてくれれば、病室の中にいる子供や家族も安心できるのに…という課題を感じます。兄弟が入院していても、みんなに遊んでほしいし、楽しいことをしてほしいです。
うちの子は入院したとき2歳半だったから、楽しい記憶ばかり残っているみたいなんです!本人は入院していたときのことを「大変やったとき」と言うんですが、「ぼく、大変やったとき、楽しかった!」って言ってます。入院するときの年齢によって、しんどさも違うなと感じますね。もう少し大きい子だと、いろんなことを理解できるからこそ大変なこともあるし、スムーズなこともあるでしょうし。うちの場合は2歳半という年齢で、8カ月の入院期間でしたが、本人が辛い思いを忘れられているのは私たちにとって救いです。
就学後だとまた違いますよね。病院によっては、年齢ごとに病棟が違うところもありますが、年齢が近い子供同士が友達になれるといいなと思います。
高学年ぐらいからの子供の心のケアって、とても難しいと思います。しんどさをちゃんと吐ける子もいれば、いつも笑顔でがんばっちゃう子もいる。付き添い家族も、子供の年齢や病院の環境によって全然違います。でも、笑顔の時間が必要というのは、みんなに共通していることだと思います。病気の治療は過酷と孤独との戦いですが、笑顔の時間を確保するのはとても大事。だって、治療後の人生の方が長いですから。
こんなしんどいこと、誰ひとりとして経験しないことを願うばかりですよね。
もうちょっと、治療の過酷さが軽減されてほしいです。
ちょっとこぼれ話:退院後に気になるあれこれ
入院中、旦那さんと話す時間はありましたか?うちは全然なかったのもきつかったです。付き添いを交代するときの5分か10分ぐらいで兄弟の様子、先生の話を手短に伝えて、すぐバイバイ!という毎日で。それから退院すると、今度は家族のご飯を作るという日常のルーティンがしんどかったですね。
うん、入院中は家事を全然してなかったから、退院後に毎日掃除や洗濯をできるかな?と不安でしたね。自宅に帰ってからは、(※5)消毒も気になってしまい、スーパーなどで買ってきた食材もいまだに消毒しないと冷蔵庫に入れられないです。
(※5)消毒:治療中は好中球の数値が500以下になると、部屋に持ち込むものをすべてアルコール消毒しなければならない。
床に落としたものなんかは、消毒で拭かないと不安ですよね。でも、コロナの影響でそれが特別じゃなくなってきた気がします。
1時間以内にできたものしか食べられないとかいろんな決まりがあって、最初は母に「これもダメなん?」ってびっくりされました!
外食も難しかったですね。入れてくれる水に氷が入っているのが気になったり、子供のスプーンも店員さんの目を気にしながら消毒してみたり…。おじいちゃんおばあちゃんの家でも気をつかいました。
食べ物を買うときは、ひたすら個包装を探してましたね。
そうそう、食品メーカーにメールで問い合わせしたりもしました。
座談会に参加してみた感想
最初は、子供の病気のことを思い出したり、経験を伝えたりするのってどうかな…とちょっと抵抗はあったけど、参加してよかったと思います!治療を経験していないママ友とは、こんな話はできないから。それに、私たち、がんばったじゃないですか!口に出してそう言えることがうれしいです!
えりさんが言ってくれた「私たち、がんばったじゃないですか!」って、禁句のように思われがちですよね。自分自身でも、そんなこと思っちゃいけないって思ってしまうこともあります。でも、私たち本当にがんばったから!自分にも「よくがんばった!」って言ってあげましょう!今回座談会に参加して、とても救われました!
そうですね。自分たちの経験が座談会という形になって、これから子供の病気で大変な思いをする人の役に立てればうれしいです!
次回予告
第2回目となる☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会は、10/11、第3回は10/20に開催します。開催後は座談会の様子をブログとInstagramでご紹介予定です!
☆付き添い家族の知恵袋☆web座談会への参加者も募集中です!
BONBONCANDYにじいろじかんでは、長期の付き添い入院を経験した家族を対象にweb座談会を全6回開催予定で、参加してくださる方を募集中です!ご自身の経験を共有することで、救われる誰かがいるかもしれません。開催日は柔軟に対応できますので、ぜひお気軽にお問合せください!
『付き添い家族の知恵袋 web座談会』の活動は
・日本コープ生活協同組合連合会様の「地域ささえあい助成」
・公益財団法人コープともしびボランティア振興財団様幹事に兵庫県の企業12社様よりこご支援いただく「やさしさにありがとうひょうごプロジェクト」にて実現に向けての資金のご提供をいただきました。